腎皮質集合管に局在し重炭酸排泄を行うβ型介在細胞の、G蛋白による機能調節の可能性を検討した。まず、尿細管微小潅流法を用いてβ型介在細胞の単一細胞内pHを測定し、その細胞機能におよぼすホルモンの影響を検討した。その結果、同細胞の管腔膜上に存在するCl/HCO_3交換系をisoproterenolが亢進させ、その細胞内情報伝達にadenylate cyclase系が役割を果たすことが確認され、さらに、そのisoproterenolの刺激作用をprostaglandin E_2が阻害することが示された。微小潅流法により、G蛋白のリボシル化を行う、百日咳毒素とコレラ毒素のβ型介在細胞の機能におよぼす影響を検討したが、有意の結果は得られず、実験系に問題のある可能性が示唆された。そこで、β型介在細胞にpeanut lectin agglutinin(PNA)が特異的に結合することを用いて、蛍光細胞分離装置による、同細胞の単離、培養を試みた。家兎腎皮質をコラゲナーゼ処理した後細胞浮遊液とし、FITCを標識したPNAを結合させ、その蛍光を指標として蛍光細胞分離装置を用いてβ介在細胞を単離した。その後コラーゲンで表面処理したdish上で3日から5日間培養した。この単離直後と培養後の細胞において、ホルモン反応性cAMP産生能とβ介在細胞の重要な特徴であるPNA結合性、免疫染色によるH^+-ATPaseの存在を検討したが、いずれもこれまで報告されたβ介在細胞での結果と一致していた。このようにして得られた初代培養β介在細胞を用いて、同細胞のリボシル化蛋白の存在と、patch clamp法によるCl^- channelの調節機構を検討した。その結果、同細胞には、コレラ毒素によりリボシル化される蛋白すなわちGs蛋白が存在し、Cl^- channelもisoproterenol、cAMP、γ-sGTPで活性化されることが示され、β介在細胞が、isoproterenolにより、G蛋白を介して調節されることが示された。
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