ラットの心臓を酵素処理して単一心室筋細胞を単離した。螢光Mg指示薬furaptraを細胞内に導入し(細胞膜透過性AMエステルによる)、細胞からのfuraptra螢光強度を測定・解析した。細胞内furaptraの螢光励起スペクトルは、塩溶液中で得られたスペクトルと非常によい一致を示したので、螢光信号から細胞内遊離Mg濃度([Mg^<2+>]i)を求めた。螢光信号の解析の結果・細胞内ではfuraptra分子の約20%がMgと結合していると考えられ、塩溶液中で求めたMgに対する解離定数(5.5mM)を用いると、[Mg^<2+>]iは 0.67mMと計算された。しかし、furaptraのMgに対する解離定数が細胞内で20〜100%増大すると考えられることから、[Mg^<2+>]iは0.8〜1.3mMの範囲にあることが示唆された。 細胞外を高濃度(20mM)Mgを含む溶液でかん流すると、1〜数時間にわたって非常にゆっくりした[Mg^<2+>]iの上昇が観察された。細胞外N_a濃度の低下、isoproterenol(10μM)、CO_2アシドーシスは有意は[Mg^<2+>]iの変化をひきおこさなかった。 ミトコンドリアのアンカプラー(1μM FCCP)によりミトコンドリアの酸化的リン酸化を抑制すると、速い時間経過で大きな[Mg^<2+>]iの上昇が観察された。[Mg^<2+>]i上昇にひき続いて細胞は持続的に短縮した。この結果は、細胞内ATPの枯渇によるMg-ATPの解離として説明することができる。同様な[Mg^<2+>]iの上昇はhypoxiの時にも起こり得ると推測した。
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