螢光Mg指示薬furaptraを蛙骨格筋単-筋線維内に注入し、細胞内螢光信号を測定して細胞内遊離Mg濃度([Mg^<2+>]i)を解析した(17℃)。furaptraの螢光励起スペクトルから求めた[Mg^<2+>]iの平均値は、塩溶液中で得られた解離定数(KD)(5.5mM)を用いて計算すると0.54mMであった。しかし、furaptraのKDは細胞内で増大する(約2倍)ことが期待されることから、[Mg^<2+>]iの真の値は約1.1mMであると推定した。細胞外を高Mg^<2+>濃度(20mM)または低Na^+濃度溶液で潅流しても、4分以内の短い時間範囲では[Mg^<2+>]iは有意に変化しなかった。(平成3年度) ラットの心臓から酵素処理により単離した心室筋細胞にfuraptraをAMIステルを用いて導入し、単一細胞からの螢光信号を測定して上述骨格筋細胞と同様の手法で解析した(32℃)。静止状態の単一心室筋細胞から得た[Mg^<2+>]iの推定値は0.8mM-1.3mMの範囲であった。細胞外液のMg^<2+>濃度を20mMに増大すると、[Mg^<2+>]iは1〜6時間のゆっくりした時間経過で上昇した。この変化は可逆性であった。その他の細胞外条件下(細胞外低Na^+濃度、10μMイソプロテレノール、CO_2アシドーシス)では、[Mg^<2+>]iは有意な変化を示さなかった。しかし、アンカプラーでミトコンドリアの酸化的リン酸化を阻害すると、[Mg^<2+>]iは急速に上昇した。(平成4年度) これらの結果より、細胞内遊離Mg^<2+>濃度は異なるタイプの筋細胞(骨格筋、心筋)においても同様で1mM付近であることが示唆された。また[Mg^<2+>]iは非常によく1mM付近で制御されているが、細胞内ATPが枯渇した時には大きく変動し得ることが示された。
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