膜電位感受性色素を用いたニューロン活動の多領域同時測定法をウシガエル腰部交換神経節に適用し、次のような成果を得た。 1.メロシアニン・ローダニン系またはオキソノール系の膜電位感受性色素で神経節を染色し、ニューロン活動を測定するための基本的な染色[色素濃度、染色時間、結合織除去法など]および光学的測定の条件を確立した。 2.神経節から延びる節前線維および節後線維の各神経束に吸引電極を取り付け、電気刺激をおこない、それにより誘発される光学的(吸光)シグナルを神経節内の多数の部位から同時に検出した。この光学的シグナルは、膜電位感受性色素特有の波長依存性を示し、未染色の標本では検出されないことから、刺激によって誘発された神経節内のニューロン活動に由来する色素の吸光変化による光学的シグナルであることが明らかになった。 3.シグナルの波形を分析した結果、節後線維の逆行性刺激により誘発される光学的シグナルは、比較的単純で、持続時間約10msecのスパイクとそれに続く後過分極相からなるパターンを示すが、節線維の順行性刺激によって誘発される光学的シグナルは、持続時間15〜20msecの複雑な形状のスパイク状のシグナルで、しばしば二峰性を示すことが明かとなった。 4.節前線維刺激により誘発される光学的シグナルは、低Ca^<2+>リンゲル液やクラーレの投与により、神経節内のシナプス伝達を抑制することにより、神経終末部を含む節前ニューロンの電気的活動に由来する成分と、節後ニューロン(神経節細胞)の電気的活動に由来する成分に分離可能であることが明らかにされた。これらのシグナルの各成分の生理的特性については、現在、さらに詳細な解析を進めている。
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