平成3年度の研究で得られた結果は、以下のように要約される。 1.ATPによるアクチン・ミオシン間の滑りの単位距離 ミオシンをコ-トしたガラス徴小針を、まずATP非存在下にアクチンケ-ブル上に接触させ、アクチン・ミオシン間に硬直結合を形成させた。ついで電気泳動的にATPをこの系に投与することによっておこるアクチン・ミオシン間の滑り距離を、投与ATP量を減少させつつ測定した結果、軽に荷重下にアクチン・ミオシンが行う最小の滑り距離は約10ー20nmであることがわかった。この距離がアクチン・ミオシン間のATP加水分解により行う単位の滑り距離と考えられる。 2.アクチン・ミオシン間の滑り距離の量子性 上記の実験に於いて、アクチン・ミオシンに投与するATP量を、最小の滑りをおこす量から少しずつ増加させて滑り距離の変化を詳しくしらべた結果、滑り距離は連続的にATP投与量と共に増大するのではなく、ステップ状に増加してゆくことがわかった。このステップの大きさは、上述の単位滑り距離にほぼ等しい。つまり、軽に荷重下に、アクチン・ミオシンが行う滑りは約10ー20nmのステップ状変化をくり返すことが強く示唆される。
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