研究概要 |
ラット脳背外側中隔核(DLSN)ニューロンにおける興奮性及び抑制性のシナプス後電位(EPSP,IPSP,LHP)が種々の伝達物質により細かく修飾調節を受けていることを実験的に示した。アデノシンによりEPSPのシナプス前性の抑制がみられたが、単シナプス性のIPSPやLHPは抑制しなかった。一方マスカリン受容体アゴニストやGABA_B受容体アゴニストは興奮性のみならず抑制性シナプス後電位をシナプス前性に抑制することから、それぞれの受容体の分布が異なることが示唆された。アデノシンによるEPSP抑制の細胞内機構について詳細はまだ不明である。次に興奮性アミノ酸のシナプス伝達に対する作用を検討した。代謝型グルタミン酸受容体の選択的アゴニストであるtrans-ACPD(30μM)を10-20分作用させると、灌流中にEPSPの抑制がみられ正常溶液に戻すとEPSPの振幅の過剰回復がみられ、この増強が長時間持続した。テタヌス刺激後の長期増強(LTP)と関係を調べるために海馬釆をテタヌス刺激することにより発生するLTPと比較検討した。テタヌス刺激後の増強は主にLHPにおいてみられた。抑制性シナプス伝達におけるLTPは興味深いが、抑制性介在ニューロンのEPSPにおける長期増強を介するものと考えられた。この介在ニューロンにおけるLTPには主にNMDA受容体が関与しているが、それだけではないらしい。事実、一部のニューロンではLTPの誘発がNMDA受容体アンタゴニストであるAPVにより抑制されなかった。細胞内電位記録しているニューロンのEPSPはさらに強いテタヌス刺激を加えると、刺激後の増大のみられる頻度が増加した。スライスパッチ法を適用して検討するためにまず従来のスライス標本における記録との比較をおこなった。静止電位、活動電位、シナプス後電位、薬物感受性について調べたが基本的に同じことが示唆された。現在スライスパッチ法を応用して、シナプス伝達の調節機序について検討中である。
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