研究概要 |
視床下部ホルモン含有神経の線維伸展に,正中隆起部の外層の更に外側,即ち結合組織・基底層が重要であることを平成3年度の研究により明らかにしている.4年度は,この結合組織・基底層の構築細胞でもある脳軟膜細胞に焦点をあてた研究を行ない,脳軟膜細胞の培養液中に強い神経栄養因子活性が存在することを見い出している。本年度はこの神経の生存率を高める因子の単離・同定、並びに培養液中に存在する主要な蛋白成分の単離精製を試み以下の点が明らかになった。 1、脳軟膜細胞の培養液中に存在する神経栄養因子はIGF様の作用を示す。 2、培養液には主要蛋白質として、7KD,16KD,18KD,27KD,32KD並びに38KDの成分がSDSページにより確認される。それぞれの蛋白成分を精製し、N-末端アミノ酸配列を解析し、ホモロジー検索をしたところ7KDはIGF-IIとdes 1-IGF-IIであることが判明した。更に、32KD蛋白はIGF結合蛋白質(IGFBP-2)であり、16KDと18KDはIGFBP-2の分解産物であることが判明した。これらの成績から、脳軟膜細胞の産生する神経栄養因子活性はIGF-II/IGFBP-2複合体であることが想定される(投稿中)。 3.次に27KD蛋白のアミノ酸配列を解析し、β-trace protein(プロスタグランジンD合成酵素)であることを見い出した。現在のところ、β-trace proteinは脳脊髄液中に多量に存在していることは判っているがその生理作用は不明である。本研究により産生部位は脳軟膜であることが示唆され、生理作用の解明の糸口が得られたと考えている。抗体を作製し、免疫組織化学によりβ-trace proteinが脳軟膜に多量に存在することも確認している(投稿中)。 以上の知見により脳軟膜の知られていない生理作用が明かとなった。現在、同定された主要産生蛋白と視床下部神経の軸策誘導との関連を解析している。
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