研究概要 |
本研究において得られた結果を要約すると, 1,ラットの終板の脈管器官(OVLT),正中視索前核(MnPO),視索上核(SON)にカニューレを留置し,これらの部位に等張脳脊髄液(CSF),高張CSFを微量(0.2μ1)投与して飲水反応を観察した。 2,その結果,OVLT,MnPO,SONいずれかの部位に高張CSFを投与した場合も,飲水量が増加した。 3,さらに,15時間絶水で脱水にしたラットのOVLT,MnPO,SONに,0.2μ1の10%リドカインを投与した後自由に飲水させたところ,飲水量が抑制された。 4,つぎに,SONをアンギオテンシンII(AII)で刺激しても飲水が透発されるかどうかを見るために,SONに10^<-7>M,10^<-6>M,10^<-5>MのAIIを投与した。等張CSFを投与したコントロールに比べ10^<-5>M,10^<-5>M AII投与で有意に飲水量に増加をみた。これらの効果は10^<-4>Msaralasinの前投与により消失した。 5,15時間絶水による脱水ラッとに,AIIの拮抗薬saralasinをSONに投与したが,飲水量に変化は認められなかった。 以上の結果から,OVLT-MnPO-SONを結ぶ浸透圧受容性神経回路の中継神経核を浸透圧的に刺激すると飲水が惹き起こされることが明らかになり,これらの核のいずれかり機能を抑えると,15時間絶水後の飲水量が障害されることから,これらの神経核はいずれも飲水発現に生理的役割を担っていることが明らかにされた。OVLT,MnPOではAIIが生理的活性物質として作用していることが指摘されているが,本研究でSONにおいて,AIIが飲水発現に関与しているか否かを検討した結果,15時間絶水による脱水ラッとの飲水には内因性AIIは関与していないことが示唆された。
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