研究概要 |
老化促進モデルマウス(SAM)のP/2系は短命系(寿命約8.8ケ月)で,正常老化モデルマウスといわれるR/1系でも寿命は約12.4ケ月である。これらの寿命はdd系マウス(日本産)の寿命約24ケ月と比較して著しく短命である。我々はまずこのマウスの代謝を中心とする生理学的特性を検索した。その結果、動物の代謝の指標を示す酸素消費量(VO_2)がdd系の1.5倍以上を示すこと,また短命のP/2はR/1のVO_2値より有意に高いことを見い出した。そしてこのVO_2の増加は特に低温環境下で大きいことから、動物の熱貫流率(TC=(VO_2)/(Tco-Ta))値,(但しTcoは結腸温,Taは外気温)を調べてみるとP/2>R/1(P<0.01)となった。この結果はP/2の熱効率が悪いことを示す。そこで両群の熱断熱性の指標となる毛皮重量を比較するとR/1>P/2(P<0.01)となり、VO_2の上昇も断熱性の減少が第一の原因であると考えられた。また体重の成長率はR/1>P/2(P<0.01)を示し、短命系のP/2の小型化が認められた。熱産生の指標となる褐色脂肪組織量はP/2>R/1(P<0.05)で、P/2の代謝促進が示唆された。更に食物摂取量,水分摂取量もP/2>R/1(P<0.01)でまたdd系と比較してもSAM群で有意の増加を示した。これらの生理的形質が遺伝するかどうかについてP/2♂とR/1♀のF_1交配実験を行ってみた。その結果全ての生理的特性はR/1系依存型を示した。特に体重,食物および水分摂取量、VO_2など代謝に関する項目ではほとんどR/1≒(P/2♂×R/1♀)となった。この結果からR形質が優性と考えられるが、今後P×F_1の戻し交配(Test cross)により確認する。本研究よりP/2の高い代謝および熱放散がその短命化をもたらしている可能性が強く、その遺伝性も大きい。これらの追求の他に運動鍛錬,寒冷馴化などの人工的な代謝亢進負荷を与え、それらがSAMの寿命におよぼす影響をみること,各種交配SAMの生理的特性およびその寿命を研究し明らかにしていきたい。
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