研究概要 |
老化促進モデルマウス(SAM)において我々は短命系のP2と長命系のR1を用い,更にこのF1雑種,F2および戻し交配群などの交配群を作成し,その生理学的特性と寿命を検討した。その結果まずP2ではR1と比較し,成長の遅延,食物水分摂取量の増大,酸素消費量の亢進という,いわゆる代謝亢進型動物であるという特徴をつかんだ。次にF1雑種においては全くR1と殆んど同じ代謝過程をもつことがわかった。このことはR1の特性がP2のそれに対して優性であることを示唆させた。戻し交配群における特性はおよそR1およびP2の中間値を示すが,個体数の不足でまだ遺伝的特性とまではいえない。一方寿命に関しては,F1雑種ではR2とほぼ同じでありまた戻し交配群のそれははっきりR系統とP系統の2群に分れた。この事は寿命では全く遺伝的に決められているということができる。生後150日のマウスを30,24,10℃の各温度下に馴化させて寿命を検討してみると,30℃の高温馴化群で最大の寿命延長がみられ,10℃低温馴化群では寿命が短命化する傾向を得た。尚運動負荷群と対照群は今のところ差が認められていない。動物の代謝は運動量によって大きく変化するため,本年度はR1およびP2の代謝に関する日内リズム(体重,食物水分摂取,酸素消費量,自発運動量など)を検討した。その結果R1では夜間に運動量などが活発化し,昼間は全く安静を保つ。一方P2では昼間の活性化がかなり目当った。ショウジョウバエから得られた77KDの蛋白(我々はこれを寿命蛋白:JPとよぶ)をR2に投与し,対照群に比較して著しい寿命の延長をみた。
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