オ-トラジオグラフィ-法では、孤束核のPGE_2受容体濃度が脳内でもっとも高いことが判明した。孤束核は細胞密度が高く神経構築が明確であり、スライス標本下においても孤束核への入出力の神経経路が容易に同定できる。従って中枢神経系におけるPGE_2の作用をシナプス前作用も含めて解析する上で格好の領域と考えられる。そこで、本研究では、実験対象を視床下部から孤束核に移し、孤束核ニュ-ロンに対するPGE_2の作用を解析した。 生後2週令のラット延髄を摘出後、厚さ120μmの横断スライスを作成した。ノマルスキ-顕微鏡で孤束核のニュ-ロンを直視しながら、細胞膜表面を覆う結合組織を除去した後、細胞体からパッチクランプ記録を行い、ニュ-ロンに対するPGE_2の直接作用を解析した。無Ca^<2+>リンガ-液でシナプス伝達を除去した条件では、PGE_2(10^<-6>ー10^<-7>M)に反応するニュ-ロンのうち、ほとんどのニュ-ロンに興奮性作用が観察された。すなわち細胞外記録で、PGE_2は発火頻度を上昇させた。wholeーcell記録では、電流固定下にPGE_2を投与すると、膜電位が脱分極し、それに伴って活動電位の発火頻度が上昇した。電位固定下(維持電位ー68mV)では、PGE_2の投与により、維持電流は内向きに流れた。±70mVのランプ波電圧を周期的に加えた時の電流の振幅は、PGE_2投与で上昇し、コンダクタンスの上昇を示した。PGE_2投与前後のランプ波電流の差電流は、-100mVー0mVの範囲で電位と直線的に変化し、その逆転電位は約-12mVとなった。そこで、PGE_2は非選択的な陽イオンチャンネルを開口させ脱分極させることが示唆された。
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