平成4年度は、下垂体細胞培養液中にエストロゲンを添加し、ドーパミンのプロラクチン分泌抑制作用およびTRHの促進作用に対するエストロゲンの効果を、多細胞集団から培養液中へのプロラクチン分泌を測定するという従来の方法により調べた。その結果、0.05nMのエストラジオールと72時間インキュベートすることによって有意な減少がプロラクチンの基礎分泌に初めて見られ、1nMの最大刺激濃度のエストラジオール投与によりプロラクチンの基礎分泌は約3倍に増加、10^<-5>Mドーパミンの抑制作用は約40%減少、10^<-7>MTRHの促進作用は約2倍に増加することが明らかとなった。 さらに、エストロゲンがドーパミン反応性プロラクチン細胞のドーパミンに対する感受性を低下させるのか、それともドーパミン不反応性プロラクチン細胞の割合を増加させるのかを知るために、0〜10^<-5>Mの種々の濃度のドーパミンに対する各々のプロラクチン細胞の分泌反応性を連続細胞ブロット法により調べ、エストロゲン処置および未処置細胞の間で比較した。1nMのエストラジオール投与時のドーパミン不反応性プロラクチン細胞の割合は全プロラクチン細胞の約6%であり、対照群との間に有意差はなかった。一方、対照群では50%のプロラクチン細胞が5x10^<-8>Mのドーパミンで抑制されたのに対して、エストロゲン処置群では2x10^<-7>Mのドーパミンを必要としたことより、エストロゲンによりドーパミン反応性細胞のドーパミンに対する感受性がかなり低下していることが明かとなった。
|