エストロゲンが甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)によるプロラクチン分泌を促進することを前年度の研究で確認したが、エストロゲンがTRH反応性プロラクチン細胞のTRHに対する感受性を亢進させるのか、それともTRH不反応性プロラクチン細胞の割合を減少させるのかは不明であった。そこで、平成5年度は、TRHに対するプロラクチン細胞の分泌反応性を連続細胞ブロット法を用いて単一細胞レベルで調べ、エストロゲン処置および未処置群間で比較した。 卵巣摘出雌ラットより単離された下垂体前葉細胞をカバーグラス上で3日間前培養した後、1nMエストラジオールを含む培地で5日間培養した。連続細胞ブロット法では、プロラクチンの基礎分泌量を知るための対照インキュベートを行った後、TRHが0〜10^<-7>Mの濃度で存在する状態で2回目のインキュベートを行った。1回目のインキュベートで得られたプロラクチン基礎分泌量に対する、2回目のインキュベートで得られたTRH投与時のプロラクチン分泌量の比を各々のプロラクチン細胞について求め、この比にもとずいてプロラクチン分泌細胞をTRH反応性および非反応性細胞に分類した。 1nMのエストラジオール投与時のTRH不反応性プロラクチン細胞の割合は全プロラクチン細胞の約40%であり、対照群との間に有意差はなかった。一方、対照群ではTRH反応性プロラクチン細胞の50%が10^<-9>MのTRHで促進されたのに対して、エストロゲン投与群では3×10^<-10>MのTRHで促進されたことより、エストロゲンによってTRH反応性細胞のTRHに対する感受性が亢進していることが明らかとなった。
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