肥満細胞または好塩基球においては、1gE受容体刺激後、ヒスタミン遊離が生じ、その結果として蕁麻疹や喘息、ときにはアナフィラキシー・ショックを起こすため、その分泌機構の解明が重要となる。我々は培養好塩基球性白血病細胞を用いて、抗原刺激後に生じる細胞内情報伝達物質の変化とヒスタミン遊離の関係を明らかにするとともにヒスタミン生合成の調節機構を分子レベルで検討した。 1.細胞内Ca濃度の測定:ラット好塩基球性白血病細胞(RBL-2H3)において抗原、薬物刺激後にみられる細胞Ca濃度の変化をCa蛍光プローベFura-2を用いて単層培養潅流系で計測した。また細胞内に取り込まれる放射性アイソトープ^<45>Caを測定し、Caの細胞内への流入を測定した。2H3細胞等の非興奮性細胞においては電位依存性Caチャネルは存在せず、Ca流入機構は明かではない。Ca流入阻害薬(SK&F96365)が抗原刺激後に生じる細胞内Ca濃度の上昇、^<45>Caの取り込み、ヒスタミン遊離を用量依存的に抑制した。またシトクロムP-450阻害薬であるエコナゾル、ケトコナゾルがCa流入を抑制することから、p-450代謝物がCa流入を調節している可能性が示唆された。 2.ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)の酵素誘導:抗原刺激後、ヒスタミン合成酵素であるHDC活性が上昇し、またフォルボルエステル刺激においてもHDC活性が上昇することからヒスタミン合成にプロテインキナーゼC(PKC)の関与が考えられた。ヒトHDCのクローニングより得られたDNAプローベを用いて、ヒト好塩基球性白血病細胞(KU-812)におけるフォルボルエステル刺激後のHDCのメッセンジャーRNAの変化をノーザンブロット法にて検討した。刺激1時間後、2.4kbのHDcmRNAが1.5倍増加したことより、PKCによるヒスタミン合成の調節が明らかとなった。
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