研究概要 |
心筋において、4つのホスホジエステラ-ゼ(PDE)のうち、筋小胞体に局在するPDE(PDE III)活性阻害が強心効果に密接に関連していることが提唱され、現在PDE IIIの選択的阻害薬がジギタリスに代わりうる新しい強心薬として盛んに開発されている。しかしながら我々は、従来同一と考えられていたPDE阻害薬の(1)心筋に対する直接作用と(2)βー受容体刺激増強効果との間には解離現象があることを見いたした(Katano and Endoh,BBRC,1990)。そこで本年度は、これの点をさらに明らかにするために、PDEの各アイソザイムの選択的および非選択的阻害薬を用いて(1)と(2)に対する作用を、細胞内cAMPレベルとの関連において解析した。方法:実験には、ラットおよびPDEアイソザイムの細胞内分布がヒトに似ていると考えられているウサギ心室筋を用いた。PDEの非選択的阻害薬としてIBMX、PDE IIIの選択的な阻害薬としてMilrinone(Mil),Yー20487(Y),PDE IVの選択的阻害薬としてRo20ー1724とRolipremを用いた。結果:(ラット)IBMXはそれ自体で強心効果を発揮すると同時に著明なβー刺激増強効果を示した。MilとYは、共に弱いながらも細胞内cAMPレベルを上昇し、強心解果を示した。ところが、βー刺激増強効果は両薬物で異なり、Milは殆ど増強効果を示さなかったが、Yではβー刺激によるcAMP蓄績増強効果がIBMXよりずっと弱いにもかかわらず、βー刺激による強心作用をIBMXと同程度増強した。両PDE IV阻害薬は、それ自体では心筋に殆ど作用を示さなかったが、βー刺激増強効果を示した。(ウサギ)PDE IVの阻害薬は(1)と(2)作用を殆ど示さなかった。一方、MilもYも(1)と(2)作用を発揮したが、βー刺激増強効果はMilでは弱く、YはIBMXと同程度の明かな増強効果を示した。現在、さらに心機能と細胞内cAMPの局在との関連を明らかにすべく、新しい手法を用いて研究を進めているところである。
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