初年度は、cAMPの分解酵素、ホスホジエステラーゼ(PDE)の各アイソザイムの選択的阻害薬を用いて、これら薬物の1)心筋に対する直接作用、2)β-受容体刺激増強作用を機能およびcAMP代謝を検討することにより、PDEの局在と機能的意義について検討した。 本年度は、交感神経刺激薬イソプロテレノール(ISP)、非選択的PDE阻害薬IBMX、プロプラノロール(Prop)を用いて、細胞内cAMPの代謝、局在、および機能的意義について検討した。 (方法):実験にはラット単離心筋細胞およびラット摘出心室筋細胞を用いた。細胞内cAMPの蓄積を高めるためISPおよびIBMXを用いた。cAMPの合成を抑制する目的でpropranololを用いた。 (結果):ISPによるcAMPの増加の程度は、IBMXによるそれに比べ少ないにも拘らず、収縮張力はIBMXよりずっと大きかった。またISPとIBMXの組み合わせにより細胞内cAMPは著明に増加した。しかし、その時の収縮張力の増大はISP単独時とかわらなかった。IBMX+ISPにより著明に増加した細胞内cAMPはPropにより著明に低下した。 本結果は、細胞内におけるcAMPの増加は心機能に必ずしも反映されないことを支持すると同時に、増加したcAMPがPDE阻害下にも拘らずPropにより何故急激に、しかも著明に低下するかという疑問が新たに生じてきた。本年度の目標であった単一細胞内cAMPの定量、カルシウム濃度測定および収縮張力測定については現在方法を確立すべく検討中である。今後はこれらの方法を駆使して、さらに細胞内cAMPの機能的意義および代謝制御機構について解明すべく努力する予定である。
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