研究課題
アフリカツメガエル未受精卵からMPF硫安画分を得て、このMPF活性及びcdc2キナーゼ活性に対するK252誘導体及びタウロスポリンの抑制作用いついて調べた。K252a及びスタウロスポリンは、MPF活性をそれぞれ15μg/ml、1.5μg/mlのIC_<50>で、cdc2キナーゼ活性をそれぞれ3.5μg/ml、0.4μg/mlのIC_<50>で抑制した。また、K252b、KT5926はそれぞれ、0.15μg/ml、60μg/mlのIC_<50>でcdc2キナーゼ活性を抑制し、抑制作用の強さは、K252b〉スタウロスポリン〉K252a〉KT5926の順序であった。cdc2キナーゼは、特にK252bに対する感受性がK252aの20倍以上であることなどの点で、他のプロテインキナーゼと異なることが判明した。プロテインキナーゼ阻害薬のMPF活性化の過程における作用についても検討した。30μg/mlK252aと1.5μg/mlK252bとのcdc2キナーゼ活性に対する抑制作用はほぼ等しいにもかかわらず、前者はcdc2タンパク質の脱リン酸化及びp110のチオリン酸化を抑制したのに対して、後者では抑制作用がみられなかつた。このことから、MPFの活性化に関与するプロテインキナーゼはcdc2キナーゼとは異なることが示唆された。培養細胞のM期開始に対する抑制作用はスタウロスポリンが最も強く、K252aがこれに次ぎ、K252bは更に弱かった。これは K252bの細胞膜透過性がK252a、スタウロスポリンに比べて低いことによっても説明可能であるが、M期開始の抑制がcdc2キナーゼ以外の作用点に薬物が作用することに基く可能性も考えられる。スタウロスポリン、K252aは、細胞に直接作用させる場合には、M期開始に対する抑制効果よりも細胞毒性の影響が強いのに対し、K252bは細胞毒性の少ない濃度範囲でM期開始を抑制した。これはK252bが比較的高い特異性をもってcdc2キナーゼを阻害するためであろう。
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