オピオイドは細胞内へのCaの流入を抑制して神経伝達物質の放出を押え、これがその鎮痛作用と関連するとされている。一方、Caなどのイオンの動きにGTP結合蛋白が深くかかわっていることが示されている。我々が現在までに行ってきた研究結果では、オピオイドがGTP結合蛋白の機能を抑制することが示唆される。一方、最近の報告ではGDP-GTP交換反応を促進する蛋白、あるいはGTAase活性を促進する因子が発見されており、オピオイドによるGDP-GTP交換反応の調節を明らかにするために本実験を行った。 (当該年度に得られた結果) 1)ラット脳海馬切片にDADLEを作用させた後に膜分画調製して^<35>S-GTP-γ-Sの結合を調べるとその結合量に約38%の減少がみられた。DADLEの作用はδ受容体への拮抗薬であるナルトリンドールで拮抗された。また、膜分画に直接DADLEを作用させても^<35>S-GTP-γ-Sの結合には影響しないので、GTP結合蛋白への直接の作用ではない。 2)^<32>-P-4-アジドアニリドGTPを合成して海馬膜分画のフォトアフィニティラベリングを行い、SDS-PAGE上でオートラジオグラフィーを行うと43kDaのGsαサブユニットと33〜34kDaのGβサブユニットへのインコポレーションがみられ、DADLEは両者へのインコポレーションをおさえた。以上の結果より、DADLEがδ受容体に作用して、GTP結合蛋白のGDP-GTP交換反応を抑制することが示唆された。
|