心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)受容体にはグアニル酸シクラ-ゼを分子内に持つANPーAとANPーB受容体及びグアニル酸シクラ-ゼ部分を欠くANPーC受容体とがある。ANPの作用の一部はサイクリックGMP(cGMP)産生を介すると考えられる。ANPの薬理作用の生後発達に伴う変動の有無を知る目的でANPが作用すると考えられる大動脈・腎・肺を選び、そのスライスのcGMP含量、ホモジェネ-ト中の膜結合型グアニル酸シクラ-ゼ活性に対するANPの効果が発達に伴って変動するかどうかを調べた。動物はWistar系雌雄ラット(新生仔、2週令、9週令)を、ANPはヒトANP(1ー28)を用いた。 〔結果〕1.スライスcGMP含量。ANP(0.1又は1μM)添加によるスライスcGMP含量の増加は、腎では発達により減少し、逆に肺では増加したが大動脈では発達による有意な変動がなかった。2.膜結合型グアニル酸シクラ-ゼ活性。ANPのスライスcGMP含量増加作用の発達による変動が、膜結合型グアニル酸シクラ-ゼ活性の変動によるかどうかを知る目的で、大動脈・腎・肺の膜結合型グアニル酸シクラ-ゼ活性を測定した。ANPで刺激される膜結合型グアニル酸シクラ-ゼ活性は、腎では発達に伴い減少、肺では増加、大動脈では発達による変動がなかった。これら変化はスライスcGMP量に対するANP効果の発達による変動と並行した。 〔考察〕以上から次のことが考えられる。1.膜結合型グアニル酸シクラ-ゼ活性は少なくとも腎・肺では発達により変動する。2.膜結合型グアニル酸シクラ-ゼ活性の発達による変動は臓器により異なる。ANPによるスライスcGMP含量増加の発達による変動は膜結合型グアニル酸シクラ-ゼの発達による変動が原因であろう。本研究から腎・肺ではANP受容体量又はそのmRNA量が発達に伴い変動する可能性があると思われる。ウシANP受容体cDNAの供与をうけたので、ANP受容体mRNAのノ-ザンブロットの実験準備中である。
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