研究概要 |
心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)はグアニル酸シクラーゼを持つANP受容体に結合し、cGMP産生を介して生理作用を発揮する。平成3年度では ヒトANPはラット大動脈・肺・腎のグアニル酸シクラーゼ活性を増加するが、ANPの効果は発達に伴ない変化し、しかも発達による変動は組織により異ること(肺では増加、腎では減少、大動脈不変)を示した。平成4年度では(1)ANP受容体サブタイプ(2)ANPの大動脈弛緩作用(3)ANP受容体遺伝子発現(mRNA量)の発達による変動の有無を検討した。 (1)ANPおよびCNPがそれぞれANP-A,ANP-B受容体の特異的アゴニストであることを利用しANP又はCNP1μm存在下のグアニル酸シクラーゼ活性を測定することで、ANP-A,ANP-B受容体の発達による変動を調べた。CNPのグアニル酸シクラーゼ刺激作用はANPとほぼ同様であり、肺・腎ではANP受容体サブタイプ(A,B)はほぼ等量存在し、発達による変動(肺で増加,腎で減少)も同様であることが推察された。 (2)ANPのラット大動脈弛緩作用は2週令から12週令までほぼ同様(EC502〜4nM)であり、大動脈グアニル酸シクラーゼ活性化作用の結果と同じく、大動脈には発達による変動はないと考えられた。(3)ウシANP受容体cDNA(BoARc,BoBRc)をプローブとしたノーザンブロットでは、肺・腎の全RNA中にANP受容体mRNAは検出できなかった。これは恐らくANP受容体mRNA量が少ないためであり、cRNAプローブを用いるか、又はPCRによる増巾しないと検出できないと思われ、現在実験を続けている。グアニル酸ソクラーゼ活性の研究から推察されたANP受容体の発達に伴なう変動が、遺伝子発現の変化に起因するか否か、現在のところ不明である。
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