研究概要 |
生後発達に伴なう薬物感受性の変化を知る目的で、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)受容体の発達による変動をラットで研究した。ANPを作用させた時の組織スライスcGMP含量の増加又はホモジェネートグアニル酸シクラーゼ活性の増加により、グアニル酸シクラーゼ内蔵型ANP受容体(AおよびBサブタイプ)量の変化を推測した。新生仔と9週令ラットとを比較すると、ANPによるスライスcGMP含量の増加は、肺では発達により増加、腎では減少、大動脈では不変であった。これら組織ホモジェネートグアニル酸シクラーゼのANPによる活性の増加も、同様の発達的変動を示した。ANP受容体A・Bサブタイプの発達が組織により異る可能性を知る目的で、各サブタイプに特異的なアゴニスト,ANP(A特異的)およびCNP(B特異的)のグアニル酸シクラーゼ活性化作用を比較した。CNP刺激によるグアニル酸シクラーゼ活性の発達による変動は、ANP刺激による活性の変動と同一で(肺で発達により増加,腎で減少)あり、肺・腎ではANP受容体サブタイプが異った発達的変動をするとは考えられない。次にANPの生理作用の発達による変動を知る為に、ANPの大動脈弛緩作用を、2・9・12週令について比較した。ANPのEC_<50>は2〜4nMで、発達による変動はなく、大動脈ではANPの生理作用は、cGMP増加作用と同じく発達による変動はない。更にANP受容体遺伝子発現の発達による変動を知る目的で、ウシANP受容体cDNAをプローブとして用いたノーザンブロットにより、肺・腎全RNA中のANP受容体mRNAの検出を行った。本法ではANP受容体mRNAは検出されず、ANP受容体mRNA量はかなり少ないと考えられる。以上から、ANP受容体量は、ラットの発達に伴ない変動するが、その変化の方向は組織により異ることが明らかになった。
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