1)目的 endothelin(ET)は血管内皮細胞や肺等に比較的高濃度存在するだけでなく、中枢神経系、脊髓後根神経節および星状神経節等の神経組織にも存在が示されている。私は平成3年度に、ET-3の節後作用およびその機構を明らかにしてきた。そこで平成4年度では、ET-3の交感神経節伝達に対する節前作用について検討を加えた。 2)方法 ET-3の節前作用を検討するためにイヌ摘出星状神経節を用い、節前神経刺激によるacetylcholine(ACh)遊離量をHPLCにより測定し、生化学的実験をおこなった。 3)結果 節前神経刺激によるACh遊離量は、ET-3(10^<-9>-10^<-6>M)により用量依存的に減少した。類似の減少は、安定型thromboxane A_2であるSTA_2(10^<-8>-10^<-4>M)でも認められたが、prostaglandin F_<2α>およびI_2では現われなっかった。ET-3によるACh遊離量の減少は、phospholipase C阻害薬のneomycin(10^<-5>M)およびprotein kinase C阻害薬のH-7(10^<-5>M)の投与では影響を受けなかったが、phospholipase A_2阻害薬のdexamethasone(10^<-6>M)およびmetylprednisoline(10^<-6>M)またはcyclooxygenase阻害薬のaspirin(10^<-3>M)およびindomethacin(5X10^<-5>M)により拮抗された。さらに減少は、thromboxane A_2合成阻害薬のOKY-046(10^<-7>M)および同特異的受容体遮断薬のS-145(10^<-5>M)により拮抗されたが、prostaglandin E_2特異的受容体遮薬のSC-19220(10^<-5>M)では影響を受けなっかった。ET-3(10^<-7>M)の応用により、栄養液中のthromboxane B_2の蓄積量が増加し、この増加はOKY-046(10^<-5>M)およびindomethacin(5X10^<-5>M)の前処置により拮抗された。 以上の結果から、ET-3はシナプス前性には内因性thromboxane A_2の産生・遊離の増強を介して、ACh遊離を抑制することにより、神経節伝達を抑制する。
|