研究概要 |
本年度の主要な成果と進行状況を研究計画・方法に従って報告する。 1.ヒト血管の主要なグルタチオンSートランスフェラ-ゼ(GST)分子種は胎盤型(GSTーπ)、GSTーM_1M_2とGSTーM_2N_1であるが、GSTーμも少量存在する。さらにヒト心臓から新しい分子種を見い出した。同分子種のサブユニットはSDS電気泳動の結果から、分子量約30,000と推定され、既知のサブユニット(28,000〜26,000)に比べ大きいが、GSTーμと免疫学的交叉性を有し、Muクラスに属すると考えられた。 2.グアニル酸シクラ-ゼ活性の測定法が確立できていないため、ニトログリセリンによるグアニル酸シクラ-ゼ活性化へのGST分子種の関与については、検討できなかった。早急に測定法を確立し、検討を進めたい。 3.グアニル酸シクラ-ゼを活性化するヘマトポルフィリン、ニトロプルシドや活性酸素(過酸化水素)などにより、GSTーπは不活性化され、GSTーM_1M_2と類似したGSTーμもヘマトポルフィリンやニトロプルシドにより不活性化されることを明らかにした。ヒトGSTーπおよびラットの対応する分子種GSTーPは過酸化水素処理によりサブユニット内やサブユニット間のシスティン残基内でSーS結合を形成することから、GSTーπはグアニル酸シクラ-ゼの活性化因子を結合・除去することが示唆された。さらに、siteーdirected mutagenesisによりGSTーPの変異体を作製しSーS結合に係わるシスティン残基を同定した。 本研究は当初の計画にそって着実に成果を挙げつつあり、本年度中にできなかった一部の計画について、次年度以降引き続き検討し明らかにする予定である。
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