研究概要 |
(1)これまで、ヒトグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)-πは血管の主要なGST分子種であり、活性酸素やヘマトポルフィリンなどのグアニル酸シクラーゼの活性化因子により不活性化されることをin vitroの実験から明らかにしたので、ヒトGST-πと類似したラットGST-Pを大腸菌に発現させ、このモデル系でGST-Pがヘムを結合するか検討した。 発現したGST-Pの約20%はhemeを結合していると考えられ、in vivoでもhemeを結合することが明らかとなった。さらに、GST-Pを発現させた大腸菌ではカタラーゼなど数種類のタンパクの低下が観察され、GST-Pを発現していないコントロール大腸菌に比べ、低濃度の過酸化水素で増殖が抑制される傾向を示した。GST-P発現大腸菌では過酸化水素処理に伴い、GST-Pのシステイン残基間でS-S結合が形成されることから、発現したGST-Pが過酸化水素をトラップし、大腸菌本来の過酸化水素に対する消去系(転写因子、Oxy Rを介するカタラーゼなどの誘導)を抑制することが示唆される。従って、GST-Pは過酸化水素を含む活性酸素とin vivoでも作用していると考えられる。 (2)GST分子種によるニトログリセリンの代謝産物について、1,2-ジニトログリセリン(GDN)と1,3-GDNの分離条件を検討中であり、GST分子種により1,2-GDNと1,3-GDNの産生に差があるが結論が得られなかった。一酸化窒素とグルタチオンからニトロソグルタチオン(GS-NO)が産生される反応は非酵素的と進む考えられたが、一酸化窒素が低濃度の場合、GSTが関与していないか検討の予定である。 (3)グアニル酸シクラーゼ活性の測定法が確立できていないため、ニトログリセリンによるグアニル酸シクラーゼ活性化へのGST分子種の関与については、まだ検討できていない。早急に測定法を確立し、検討の予定である。
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