1992 年度実績報告書

中枢神経系に局在する新型カルシウム結合蛋白(セファロカルシン)

研究課題

研究課題/領域番号	03670119
研究機関	東京大学
研究代表者	志村二三夫東京大学, 医学部(医), 助手 (70111523)
キーワード	セファロカルシン / Ca^<2+>結合蛋白 / 中枢神経系 / Ca^<2+>センサー / コンフォメーショナルチェンジ / 有機リガンド結合部位 / 分子型 / 亜鉛結合部位
研究概要	我々は、中枢神経系におけるCa^<2+>結合蛋白の多様性・中枢神経系に固有な蛋白の解析から、新たな脳のCa^<2+>問題へのアプローチを開始し、中枢神経系局在性の新型30-kDa Ca^<2+>結合蛋白をラット脳サイトソルより単離・精製してセファロカルシンと命名した。昨年度、セファロカルシンの大量精製が達成され、分子の性質を詳しく調べる過程で、セファロカルシンが非変性条件下の電気泳動で示される少なくとも三つの分子型(I〜III型)からなるという新事実が明らかになった。本年度は、この成果を更に発展すべく、各分子型の単離・精製法を確立し、それぞれの性質を詳しく調べた結果、これまで集合的に捕えられていた、高親和性のCa^<2+>結合、Ca^<2+>応答性の有機リガンド結合部位、求電子試薬Zn^<2+>結合部位等の性質がセファロカルシン分子型個々に通有で有ることが明らかとなった。更に、Ca^<2+>依存性のフエニルセファロースとの結合が見出され、これまで蛍光分光学的に或いは電気泳動によって示されてきた、Ca^<2+>結合に惹起される溶媒への疎水領域の露出を伴う蛋白構造の大きな変化がほぼ確実となり、現在継続中の生理的有機リガンド・標的分子の追究に有用と考えている。更に、セファロカルシンはCa^<2+>結合蛋白には珍しく、反応性の-SHを持つことが判明し、しかし-SHと-S-S-の存在様態の違いによって分子型が生じた可能性は否定され、またリガンド結合の有無やN末アミノ基修飾の存否も分子型の違いを説明せず、ここにセファロカルシンの最終的同定/分子型相互の蛋白化学的関連の解明に向けてアミノ酸一次配列を決定する環境が整い、これに着手した。加えて、中枢神経系内での分布が分子型によって異なるなど、セファロカルシンは極めてダイナミックな特性に富むことが明らかとなり、分子型の単離・精製の成功を契機に開けた分子型特異抗体作成の可能性を通し、各分子型の中枢神経系における分布、生理的変動・機能擾乱に伴う消長や変動等、セファロカルシンの生理的意義を追究する事が今後の課題となった。

研究成果

(7件)

すべてその他

すべて文献書誌 (7件)

[文献書誌] Shimura,F.,and Takai,K.: "A new type of calcium-binding protein(cephalocalcin) exclusively localized in the rat central nervous system(CNS):Binding and conformational studies with tryptophan fluorescence and exogenous fluorophores" Frontiers and New Horizons in Amino Acid Research(Takai,K.ed.),Elsevier,Amsterdam. 561-565 (1992)
[文献書誌] Shimura,F.,and Takai,K.: "A new type of calcium-binding protein(cephalocalcin) from rat brain:Intrinsic tryptophan fluorescence and 8-anilinonaphtha-lenesulfonate binding to probe calcium binding,calcium-induced conformational changes,and binding sites for organic molecules" Advances in Tryptophan Research 1992(Ishiguro,I.,Kido R.,Nagatsu,T.Nagamura,Y.,and Ohta,Y.eds.),Fujita Gakuen University Press,Nagoya.
[文献書誌] 91-94 (1992)
[文献書誌] Shimura.F.,Kwon,S.,and Takai,K.: "Isolation,purification,and characterization of a new type of 30-kDa calcium-binding protein from rat brain" J.Biol.Chem.(under revision).
[文献書誌] 志村二三夫: "Cephalocalcin(セファロカルシン)" 生体の科学. 44. (1993)
[文献書誌] 志村二三夫,高井克治: "中枢神経系局在性30-kDa Ca^<2+>結合蛋白cephalocalcinのチオール基" 64. 1038- (1992)
[文献書誌] 志村二三夫,高井克治: "中枢神経系局在性30-kDa Ca^<2+>結合蛋白(cephalocalcin):二つの分子型" 63. 1006- (1991)

1992 年度 実績報告書

中枢神経系に局在する新型カルシウム結合蛋白(セファロカルシン)

研究代表者

志村 二三夫 東京大学, 医学部(医), 助手 (70111523)

研究成果

[文献書誌] 91-94 (1992)

[文献書誌] Shimura.F.,Kwon,S.,and Takai,K.: "Isolation,purification,and characterization of a new type of 30-kDa calcium-binding protein from rat brain" J.Biol.Chem.(under revision).

[文献書誌] 志村 二三夫: "Cephalocalcin(セファロカルシン)" 生体の科学. 44. (1993)

[文献書誌] 志村 二三夫,高井 克治: "中枢神経系局在性30-kDa Ca^<2+>結合蛋白cephalocalcinのチオール基" 64. 1038- (1992)

[文献書誌] 志村 二三夫,高井 克治: "中枢神経系局在性30-kDa Ca^<2+>結合蛋白(cephalocalcin):二つの分子型" 63. 1006- (1991)

1992 年度実績報告書

志村二三夫東京大学, 医学部(医), 助手 (70111523)

[文献書誌] 志村二三夫: "Cephalocalcin(セファロカルシン)" 生体の科学. 44. (1993)

[文献書誌] 志村二三夫,高井克治: "中枢神経系局在性30-kDa Ca^<2+>結合蛋白cephalocalcinのチオール基" 64. 1038- (1992)

[文献書誌] 志村二三夫,高井克治: "中枢神経系局在性30-kDa Ca^<2+>結合蛋白(cephalocalcin):二つの分子型" 63. 1006- (1991)