1.L型ピルビン酸キナーゼ遺伝子のインスリン反応性領域の同定 本遺伝子の-76から-170までに肝細胞での転写に必要な3ケ所のシス作用領域が存在し、これらは1つのエンハンサーユニットとして機能する。このユニットがインスリン反応性を有するかどうかを調べるために-189から+37までをクロラムフェニコールアセチルトアンスフェラーゼ(CAT)に連結して融合遺伝子をつくり、受精卵に導入してトランスジェニックマウスを作製した。CATの発現は内因性遺伝子と同じ、肝臓、腎臓、小腸でみられたが、脳、脾臓、骨格筋では認められなかった。肝臓での発現は食餌性グルコースやフルクトースによって、腎臓と小腸での発現はフルクトースによって促進された。次に、同じ融合遺伝子を肝細胞に導入し、インスリンの効果を調べた。インスリンはグルコース存在下でCATの発現を促進したが、ピルビン酸存在下では効果が認められなかった。以上の成績をこれまでの結果と考え合わせると、インスリンは肝臓のグルコース代謝を促進させることにより、フルクトースからと同じ中間代謝産物を蓄積させ、これが何らかの方法で、エンハンサーユニットを介し、本遺伝子の転写を促進するという可能性が考えられる。 2.グルコキナーゼ遺伝子のインスリン反応性領域の同定 培養肝細胞を用いて、CATアッセイにより、インスリン反応性領域の固定を試みた。その結果、転写開始点上流約1.1kbまでに存在することが判明した。
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