研究概要 |
ラット肝細胞質画分より,本酵素を単一になるまで精製した。本酵素活性型2量体の分子量は135キロダルトンで,低温下では単量体(分子量63キロダルトン)に解離して失活した。ATP存在下で加温すると4量体(分子量320キロダルトン)に会合でき,2量体よりさらに高活性の酵素に再構成できた。この酵素サブユニット間結合には疎水結合が主として関与している事が示唆された。本酵素単一標品を家兎に免疫し,ポリクロ-ナル抗体を調整した。本抗体を利用して,この酵素の生理的変動を検討し,生理的役割を解析した。絶食,糖尿病等の条件下では,脂肪酸の酸化が亢進することが知られているが,本酵素活性並びに酵素蛋白量は著明に上昇した。甲状腺ホルモン投与でも本酵素の活性や蛋白量の増大が認められた。さらに長鎖脂肪酸の酸化を増大させ,コレステロ-ル合成を抑制する抗高脂血症剤クロファブレ-ト(パ-オキシゾ-ム増殖剤)を皮下注射(1回投与)しても(餌に混入して投与しても)3日目に活性や酵素蛋白量は2〜3倍に上昇した。アスピリンも肝臓のパ-オキシゾ-ム増殖作用がある事が知られているが,クロフィブレ-ト投与時に見られる本酵素活性の増大と活性増大の持続力には及ばず,一過性であり,本酵素の増大とパ-オキシゾ-ム数の増大との間には,直接的な相関や係にはなっておらず,本酵素のパ-オキシゾ-ム増殖剤による誘導メカニズムは非常に複雑で,さらに検討を加える必要がある。クロフィブレ-トと甲状腺ホルモンを併用すると,最大の誘導が見られた。この事より,核内レセプタ-(甲状腺ホルモンレセプタ-やパ-オキシゾ-ム増殖剤レセプタ-)の相互作用より,本酵素誘導メカニズムの解析が興味ある問題として残されている。さらに,クロフィブレ-トの長期投与により,肝発癌作用が対られており,長期投与下の本酵素の動態もマ-カ-として興味がもたれる。
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