研究概要 |
本年度は,報告者により発見された肝細胞質型アセチルCoA水解酵素をラット肝より,単一にかつ多量に精製する方法を新たに開発した。 この純品酵素を多量に用いて家兎に免疫し,昨年度に調整した抗体よりさらに力価と特異性の高いポリクローナル抗体を得ることが出来た。本抗体を用いて,ウエスタンブロット法を行うと,細胞質画分の本粗酵素を感度よく,特異的に定量することが可能となった。 近年,抗高脂血薬剤(パーオキシゾーム増殖剤)クロフィブレートはステロイドホルモンレセプターと類似した細胞内レセプターをトランスジューサ-とする遺伝子発現調節機構を介して作用を発現している事が明らかにされて来た。本酵素はクロフィブレート投与で著明な酵素活性の増大が認められる。0.5%クロフィブレート含有食を18ケ月間投与したラット肝の本酵素をウエスタンブロット法で解析すると,本酵素蛋白は約4倍にも増大し,誘導を受けていることが明らかとなった。以上より,本酵素はクロヒブレートのマーカー酵素となり得,さらにパーオキシゾーム増殖機構やノンゲノトキシツク発癌機構解明に有用な手段を提供すると考えられる。更にウエスタンブロット法でパーオキシゾームに存在する本酵素を解析したが,細胞質型酵素と免疫化学的にも分子量的にも異っていなかった。生化学的にも細胞質型の特性を備えており,同一酵素である事が示唆された。 一方,本酵素のcDNAより一次構造解析の為,多量精製した単一酵素をV_8プロテアーゼとリシンエンドペプチダーゼでペプチド断片に分解し,N未アミノ酸配列を決定した。現在このアミノ酸配列より,ラットmRNAから本アセチルCoA水解酵素のcDNAを増幅させ,本酵素の一次構造の決定作業を行っている。マイクロシークエンスで得たアミノ酸配列のデータバンク解析で,本蛋白は新規の蛋白質である事が判った。
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