脳に特異的なシトクロムb_5新分子種の同定

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03670128
• 研究機関: 大分医科大学
• 研究代表者: 指吸 俊次 大分医科大学, 医学部, 助教授 (00019564)
• 研究分担者: 調 恒明 大分医科大学, 医学部, 助手 (50179058) ; 竹下 正純 大分医科大学, 医学部, 教授 (50019551)
• キーワード: シトクロムb_5 / cDNAクローニング / 脳における機能 / 脳での局在部位

研究概要

本研究では脳に特異的なシトクロムb_5の複数の分子種をcDNAクローニングとその構造決定により同定し、大腸菌でのcDNA発現系を用いてそれぞれのタンパク質を大量に発現させて性質を調べ、それらの構造と機能を対応させようとするものである。肝ミクロソームのシトクロムb_5は種々の機能を果たすことを知られており、これまで1種類のシトクロムb_5が機能しているように考えられてきたが、最近の様々な研究報告は構造の異なるシトクロムb_5が存在することを示唆している。
本年度の研究では脳に存在すると考えられるシトクロムb_5の新分子種(ブタ脳では3種類あることを確認している)を同定するために、ヒト肝シトクロムb_5のcDNAを用いて(1)ヒト脳、マウス脳のcDNAのライブラリーをハイブリダイゼーション法によりスクリーニングをした。(2)またこれと並行してシトクロムb_5に対する抗体を用いて脳の入gt11発現cDNAライブラリーをスクリーニングした。(3)ヒト肝のシトクロムb_5のアミノ酸配列をもとにプライマーを作りPCR法でクローニングした。まだいづれの方法によっても陽性のクローンが取れていない。原因として考えられるのは、(1)脳ミクロソーム自体が肝臓の1/(10)位しかなく、またそのミクロソーム中のシトクロムb_5自体の含量も低い(組織全体では肝臓の1/(30)〜1/(50)程度と考えられる)こと、(2)シトクロムb_5cDNAに偽遺伝子が多いらしいこと(肝臓のcDNAライブラリーについてPCR法でb_5cDNAのクローニングを試みたが偽遺伝子が取れた)ことなどが考えられる。またシトクロムb_5とシトクロム抗体を用いた免疫染色法で脳内のシトクロムb_5の局在部位を調べた。その結果、ラット脳では肝ミクロソームの場合と異なりシトクロムb_5とシトクロムP450の組織内分布がはっきりと異なることが明らかとなり、脳でのシトクロムb_5の機能の解析の重要性がクローズアップされた。

研究成果

• [文献書誌] Nagai Takushi: "Analysis of Mutant NADH-Cytochrome b_5 Reductase:Apparent TypeIII Methemoglobinemia Can Be Explaines as TypeI with an Unstable Reductase" Blood. 81. (1993)
• [文献書誌] Shirabe Komei: "Enzymatic Instability of NADH-cytochrome b_5 Reductase as a Cause of Hereditary Methemoglobinemia Type1(Red Cell Type)" Journal of Biological Chemistry. 267. 20416-20421 (1992)
• [文献書誌] Yubisui Toshitsugu: "Structural Role of Serine 127 in the NADH-binding Site of Human NADH-Cytochrome b_5 Reductase" Journal of Biological Chemistry. 266. 66-70 (1991)
• [文献書誌] Katube Takanori: "Exonic Point Mutations in NADH-Cytochrome b_5 Reductase Genes of Heterozygotes for Heterozygotes for Hereditary Methemoglobinemia Type1 and III" American Journal of Human Genetics. 48. 799-808 (1991)
• [文献書誌] Shirabe Komei: "Role of Cysteine Residues in Human NADH-Cytochrome b_5 Reductase Studied by Site-directed Mutagenesis" Journal of Biological Chemistry. 266. 7531-7536 (1991)
• [文献書誌] Yubisui Toshitsugu: "Studies on thi Role of Serine-127 in NADH-Cytochrome b_5 Reductase by Site-directed Mutagenesis" Flavins and Fravoproteins,Proceedings of the 10th International Symposium. 856-858 (1991)