研究概要 |
1.Tリンパ球におけるDGキナーゼアイソザイムの活性化機構……精製80kDaDGキナーゼの活性化因子であるスフィンゴシンが無傷Jurkat細胞においても内因性(長鎖)と外因性の短鎖(diC8)DGのリン酸化を亢進させることを見いだした。さらに最近細胞内リン酸化に複数のアイソザイムが関与している可能性が示唆されたのでJurkat細胞に含まれるDGキナーゼアイソザイムを、異なる基質(DiC10,C18:0/C20:4)と活性測定法(オクチルグルコシド混合ミセル法とDOC法)を用いて、シトソールと膜に存在するDGキナーゼを酵素学的、免疫学的方法で比較検討した。その結果、細胞内分布、DG分子種特異性、スフィンゴシンの効果、抗80kDaDGキナーゼ抗体との反応性で区別できる少なくとも、4種のDGキナーゼアイソザイムが存在することがわかり現在投稿中である。さらに現在細胞分化におけるDGキナーゼアイソザイムの役割を知る目的でHL60をTPAやDMSOで分化させたときの酵素の変動を検討中である。 2.80kDaDGキナーゼの機能部位の解析……本酵素の一次構造には、E-Fハンド、亜鉛フィンガー、両親媒性のα-ヘリックス、ATP結合部位等の構造が存在する。まずE-Fハンド構造に着目し、この酵素はCa^<2+>と結合することをbinding assayにより示した。(J.Biol.Chem.266,7096)また種々の欠失変異や点変異を導入したcDNAを、大腸菌又はCOS細胞に発現させて機能を解析した。(Biochem.Biophys.Res.Commun.181,1015)さらに昆虫細胞の発現系を用い、種々の欠失変異や点変異を導入したcDNAを導入してタンパク質を発現させ、DG,リン脂質、ホルボールエステル、DNAへの結合能を調べ、その結果は現在投稿準備中である。 3.DGキナーゼアイソザイムの一次構造決定……150kDaDGキナーゼのクローニングは陽性クローンを得ることが出来なかった。そこで今まで決定された80kDaと90kDaの塩基配列を比較して相同性の高い10ヶ所の配列を選び、オリゴヌクレオチドを作成した。それをプライマーとしてPCRを行なったところ、アイソザイムとおもわれる複数のPCR産物が得られた。現在、さらなる解析を行なっている。
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