インスリンによる糖輸送活性の促進:その分子機序

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03670130
• 研究機関: 帝京大学
• 研究代表者: 笠原 道弘 帝京大学, 医学部, 教授 (40010102)
• 研究分担者: 塩森 継紀 帝京大学, 医学部, 助手
• キーワード: インスリン / 糖輸送体 / 糖輸送 / グルコ-ス輸送 / GLUT1 / SGLT1 / 腎臓 / 胎盤

研究概要

細胞膜上のインスリン受容体にインスリンが結合することにより種々の細胞内情報伝達が起こり糖代謝の変化を主とする代謝応答が誘導される。糖代謝調節の第一段階である糖輸送活性上昇にメカニズムを明らかにするべく様々なアプロ-チで研究を行った。本年は特に第1年目であるので糖輸送体とインスリン受容機構の基本的性質を明らかにすることに主眼をおいた。
1.糖輸送体の組織内分布
5つの促進拡散系糖輸送体(GLUT1ー5)と1つのNa^+依存能動輸送系輸送体(SGLT1)が知られているが、そのうちもっとも基本的なGLUT1とSGLT1について種々の組織での局在性を蛍光抗体法及び免疫電顕法により調べた。ラット腎臓ではGLUT1は近位尿細管S3、ヘンレのル-プ及び集合管の側底膜に存在していた。SGLT1は近位尿細管S1ーS3の刷子縁膜に存在していた。ラット網膜ではGLUT1が色素上皮の先端膜及び側底膜に存在していた。網膜内では血管内皮細胞にも存在していた。ヒト胎盤ではGLUT1はジンチチウム細胞の刷子縁膜及び基底膜に存在していた。いずれもこれまでの生理学的実験から予想される場所に局在していたが、今後の糖輸送体研究の基膜デ-タとなろう。
2.インスリン様因子I(IGFー1)受容体の定量
ヒト胎盤から1GFー1受容体を精製して作成したウサギ抗体を用いて高感度なラジオイムノアッセイ法による定量法を確立した。IGFー1結合活性が増加することが知られている乳ガン患者組織ではIGFー1受容体が増加することを認めた。
この様にインスリン受容から糖輸送活性上昇にいたる入口と出口を確実に捕捉する基礎的デ-タが得られたので、今後さらに両者をつなげる情報伝達の研究に進んで行きたい。

研究成果

• [文献書誌] Takata,K.: "Localization of Na^+ーdependent active type and erythrocyte/HepG2ーtype glucose transporters in rat kidney:Immunofluorescence and immunoーgold study." J.Histochem.Cytochem.39. 287-298 (1991)
• [文献書誌] Takata,K.: "Localization of two types of glucose transporters in rat kidney." Acta Histochem.Cytochem.24. 105-110 (1991)
• [文献書誌] Pezzino,V.: "Radioimmunoassay for human insulinーlike growth factorーI receptor:Applicability to breast carcinoma specimens and cell lines." Metabolism. 40. 861-865 (1991)
• [文献書誌] Takata,K.: "Immunohistochemical localization of Na^+ーdependent glucose transporter in rat jejunum." Cell Tissue Res.267. 3-9 (1992)
• [文献書誌] Takata,K.: "Ultracytochemical localization of the erythrocyte/HePG2ーtype glucose transpoter(GLUT1) in cells of the bloodーretinal barrier in the rat." Invest.Opthal.Visual Sci.33. 119-125 (1992)
• [文献書誌] Takata,K.: "Localization of erythrocyte/HepG2ーtype glucose transporter(GLUT1) in human placenta villi." Cell Tissue Res.267. (1992)