1.RNase Hによるsubtraction libraryの手法の確立した。その応用によりオタマジャクシの退縮中の尾に誘導される遺伝子のクローニングを行った。10種類程の遺伝子が得られ、その発現様式から3グループに分類された。第1グループは脳、眼球、後肢、尾にすベてに発現しているものである。第2グループは後肢と尾に発現されている。第3グループは退縮している尾に特異的に発現されている。 2.変態前のオタマジャクシの尾から、甲状腺ホルモン非存在下で初代培養を始め、いくつかの継代培養可能な細胞株がいくつか得られた。そのうちの少なくとも1つ(12T-15)に、変態時に観察される血中量にほぼ同じ10nMの甲状腺ホルモンT3を添加すると、その細胞は1-2週間のうちに培養皿から死んで離れていく。培地に加えてある10%牛胎児血清を1%馬血清に代えて5日後、抗トロポニシンT抗体で染色すると、強いシグナルを得た。このことは、この細胞が筋芽細胞由来であることを意味する。 3.退縮中の尾に特異的に誘導される遺伝子のうちで、細胞株12T-15を甲状腺ホルモンで処理して1日以内に誘導されるものは第3グループに属している1個の遺伝子だけであった。甲状腺ホルモン処理4時間後から甲状腺ホルモン受容体β遺伝子が発現され、8時間後からclone T6-5-12のmRNAが増加していた。甲状腺ホルモン受容体β遺伝子は処理前から発現されていた。そのことから甲状腺ホルモンが既存の甲状腺ホルモン受容体αと結合して甲状腺ホルモン受容体β遺伝子を活性化し、甲状腺ホルモンと複合体を形成し、更にclone T6-5-12の転写を開始させたと考えられる。その遺伝子の塩基配列を決定してホモロジー検索したが、何の類似性も得られていない。 細胞株12T-15に、退縮中の尾に特異的に発現されている遺伝子を導入することにより細胞死の分子機構を解明できると考えられる。
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