研究概要 |
血圧調節には、数多くの因子が関与し、複雑な調節機序を形成しているが、最近のナトリウム利尿ペプチドやエンドセリンの発見は、このような血圧調節機序解明への大きな推進力となったと考えられる。本研究では新規血管作動性物質を検索するためにアッセイ法の確立を行なうとともに、この方法を用いて新規血圧調節物質のスクリーニングを行った。 血管作動性物質のアッセイ法として、摘出血管やヒヨコ直腸平滑筋などの平滑筋の収縮、弛緩活性を指標とする方法を従来用いていたが、新しい方法として培養内皮細胞および培養平滑筋細胞のセカンドメッセンジャー(cAMP,cGMPなど)の変動や細胞増殖および抑制活性を指標とするアッセイ法を開発した。この方法を用いて現在までに既知の血管作動性ペプチドとクロマト上の拳動が異なる10種以上のペプチドを単離したが、残念ながらCGRP、VIPあるいはナトリウム利尿ペプチドの部分分解や転移を受けたペプチドであった。現在さらに対象組識やアッセイシステムを改良しながら精製を続けている。 またアッセイ法は従来のヒヨコ直腸の弛緩活性を使用し、出発材料を培養細胞系に変更してスクリーニングを行った結果、フォルボールエステル(TPA)刺激した急性白血病由来THP-1細胞の培養上清中にヒヨコ直腸弛緩活性が確認されたため、これをゲル濾過およびHPLCにて精製した。構造決定の結果、このペプチドはCNP-22のN末端に7残基延長したCNP-29であることが明らかとなった。THP-1細胞はTPA刺激によりマクロファージ様細胞に分化し、これとCNP産生とがほぼ平行するため、マクロファージ様細胞に分化したTHP-1細胞がCNPを産生すると考えられる。培養血管平滑筋細胞にCNPを作用させると細胞増殖が抑制されること考え合わせると、この結果は血管損傷部位や動脈硬化巣でCNPが機能している可能性を示唆すると考えられた。
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