研究概要 |
ヘムオキシゲナーゼは、基質であるヘムを始め、貴金属、有機化合物、酸化剤、生理活性物質、紫外線などにより著名に誘導される。私どもはこれらの誘導機構を明らかにするため、ラットヘムオキシナーゼ遺伝子のクローニングを行い、従来Mullerらによって報告された同遺伝子5'側上流域を更に遡って約4.3kbの領域を持つクローンを新たに得た。cat遺伝子上流にエクソン1の一部を含む本上流域の欠失変異体を挿入し、ラットグリオーマ細胞(C6)に導入し、ヘミン、カドミウム、のヘムオキシゲナーゼ遺伝子プロモーター部への影響をcat活性の一時的発現により観測する系を作成した。その結果、約-3.3/-2.9kb領域にカドミウム特異的発現制御を司るエレメントの存在を示唆する結果を得た。しかし私どもが得た上流4.3kbまでの領域にはすくなくとも本細胞を使った系においてはヘミンによるcat活性の上昇は観測されなかった。 カドミウム特異的エレメントを見いだす目的で-3.3/-2.9kb領域をサブクローニングし、塩基配列を決定し、従来知られたエレメント、特にメタロチオネイン遺伝子で報告されているMREを中心に解析を行った。その結果本塩基配列の中ほどにCTGTGCTCAGGGという配列が見つかり、これはMREのコンセンサス配列であるCTNTGCRCNCGG(N=any,R=AorG)に極めて類似した配列であることが判った。 そこでこのDNAフラグメントを放射性同位体標識してカドミウム処理したラット肝から調整した核抽出液を使いゲルシフトアッセイをおこなったところ、タンパク質-DNAのバンドが検出された。今後フットプリンティング法などによりエレメントの同定を検討して行きたい。
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