研究概要 |
コリン欠乏食やメチオニン代謝阻害剤投与による肝炎の発症の影響を検討したところ、早期に肝炎を誘発でき、また酵素の発現も自然発症時と類似したパターンを示した(Jpn.J.Cancer Res.82,390-396,1991)。 コリン欠乏食投与のLECラットにおいて、総シトクロムP-450量、シトクロムb_5量、NADH-シトクロムb_5還元酵素活性はいずれも30%に減少し、脱アルキル化活性も10%にすぎなかった。一方、γ-GTPの活性は約6倍ほど増大した。対照ラット(LEA)においても同様にγ-GTPの活性の増加が認められたが、P-450アイソザイムの減少はLECラットとは異なるパターンを示した。LECラットにおける肝薬物代謝酵素の発現パターンは、化学発癌においてみられる酵素偏倚と類似していたが、コリン欠乏食投与によりその発現は更に促進され、肝炎をより早期に誘発できた。DNAの低メチル化とこれらの薬物代謝系酵素の発現との関連性が強く示唆された。これらの遺伝子の発現はDNAメチルトランスフェラーゼの遺伝子発現パターンとよく一致しており、LECラットの肝発癌機構にDNAのメチル化が強く関与していると思われた。実際、肝炎肝癌発症時には肝DNAメチル化の程度は有意に低下しており、5-アザシチジンに対する感受性は対照(LEA)ラットよりも高かった(Biochem Int.23,9-14,1991)。 次に、12週令LECラットに0、1%DL-エチオニンを10日間自由摂水させたところ、全てのラットが黄疸を呈し、GOTの著明な上昇が見られた。また、5週令のLECラットにL-エチオニン(200mg/Kg/日)1週間腹腔内投与後、肝薬物代謝系酵素の変動を検索したところ、コリン欠乏食投与時とほぼ同様の結果を得た。
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