研究概要 |
赤血球膜バンド3蛋白質による陰イオン透過の機序を明らかにする目的で透過活性中心の同定とその構造解析を行っている。バンド3蛋白質はcDNAからその全一次構造は推測されているが、蛋白質化学的方面からの研究はあまり進展していない。これまでに、我々は陰イオン透過系の基質でもあり、アミノ基の化学修飾剤でもあるピリドキサルリン酸を用いて陰イオン透過活性中心をアフィニティ-標識し、標識部位の同定分離一次構造決定に成功している。その結果,バンド3蛋白質のカルボキシ末端から78個のアミノ酸領域が活性中心の一部を形成していることが判明した。特に,cDNA推測配列上851番目のリジン(Lysー851)がアフィニティ-標識部位で,この部分の標識と陰イオン透過活性阻害との間に量的な比例関係が成立するので,Lysー851を含む領域が陰イオン透過活性中心の一部を構成していると,我々は考えている。 上記Lysー851に加えて,赤血球膜内側に位置しているヒスチジンが陰イオン透過活性発現に必須であることを我々は報告している。本研究はこの必須ヒスチジン残基の同定分離が目的である。Lysー851に用いたようなアフィニティ-標識法が、このヒスチジン残基の場合は思いあたらず,現在のところ、ともかく,ヒスチジンを含むペプチド部分を分離精製し、その膜内トポロジ-を決定する方向で研究を進めている。本年度の研究で,バンド3蛋白質の膜内ドメインに含まれている6ヒスチジン残基のうち、5残基について、それぞれのヒスチジンを含むペプチドを精製することができた。このうち、3ヒスチジン残基はバンド3蛋白質の(内向型【double arrow】外向型)構造変化にともなってin situで移動することが明らかになり、この中のどれかが,活性発現に必須のヒスチジンであると推測された。この部分について,現在論文にして投稿中である。
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