粘膜付属リンパ装置(MALT)におけるILー2レセプタ-β鎖の発現を検索することを目的として実験を行なった。既に我々はヒトT細胞系の培養株を用いて免疫組織化学的検索を行ない、ILー2Rβの発現を認めている。しかしILー2Rβの発現はα鎖の発現に比し、約1/100と非常に少なく、免疫組織化学的検索にも困難を伴うことが予想されたので、初めにILー2Rαでスクリ-ニングする必要があると考えた。 方法はヒト消化管(潰瘍性大腸炎・クロ-ン病・大腸癌等および病変から離れた正常と考えられる腸粘膜ー小腸を含む)を過ヨウ素酸リジンパラホルムアルデヒド(PLP)にて0℃、1時間固定し、固定液の中でマイクロウェ-ブ(37℃を越えないようにする)処理し、その後0℃でPLPにて後固定(総計4時間)した。凍結切片を作製して免疫ペルオキシダ-ゼ法にて免疫染色を施した。ILー2Rαでスクリ-ニングを行ないα鎖陽性の場合にはβ鎖、CD3・4・8、TCRγ・δ鎖、ICAMー1等の接着因子の局在を検索した。 結果はヒト消化管疾患の中潰瘍性大腸炎4例、クロ-ン病1例、大腸癌(3例)近傍のリンパ装置・パイエル板のいずれにも陰性であった。現在ヒト大腸悪性リンパ腫の検索を急いでいる。 考察:現在までILー2Rαの陽性例を認めていない。しかし症例がまだ少ないためILー2レセプタ-の発現に関してはまだ結論を出せない段階である。大腸悪性リンパ腫に関してはILー2RαのみならずILー2Rβの発現も大いに可能性があるので検索をいそいでいる。その結果、悪性リンパ腫の発生やその増殖パタ-ンの相違点等に関する知識を得る可能性がある。
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