研究概要 |
巨核球系分化の分子生物学的アプロ-チとして、Cーyes癌遺伝子蛋白のチロシンキナ-ゼ活性(TRK活性)のdown regulationが巨核球系分化に特異的であることを証明する実験を計画した。 1.ヒト巨核芽球性株細胞(Tー33)およびTPAで巨核球系への分子を示すK562株細胞をTPA10^<-9>Mで処理し,継時的に細胞を回収して巨核球分化に至る経過中のCーyesとcーsrcチロシン蛋白キナ-ゼ活性をカプラン法に従って行なった。対照として血小板糖蛋白のGPIIbーIIIaを有するHEL株細胞,顆粒球/単球系のU937株細胞とHLー60株細胞について同様の測定を行なって比較検討した。その結果,これまでに得られた結果の再現性を確認できた。すなわち,Tー33株ではTPA処理后3時間から持続的にTPK活性の低下を認めた。これに対して,K562株では早期の時期を充分検討できなかったが16時間以降低下した。HLー60株では3時間目から12時間目にかけて低下する傾向がありその解釈がむづかしいが,U937株は早期から持続的に増加し,Tー33株,Kー562株とは明瞭なコントラストを示した。 2.ILー6,エリトロポエチレンによるTー33株の巨核球系分化を試みたが,分化誘導自体の結果が不安定であり,TpK活性の変動をはっきり出せなかった。したがって,ILー6,エリトロポエチンの分化誘導実験を完遂した時点で再度TpK活性の測定を試みるつもりである。 3.Cーyes癌遺伝子蛋白のTPK活性のdown regulationを介する巨核球系分化が巨核球系に対して特異的であるか否かの検討に関しては,K562株細胞の巨核球,赤芽球,顆粒球系の三系統への分化誘導を同時に確実に識別する手段が予想外に難しく,本年度はこの時点で研究を中断した。K562株を使う限り,特異性の判定基準の基盤を確立することが優先されるのでこの点をさらに検討していきたい。
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