ホルモン標的細胞の細胞死に及ぼすホルモン作用

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03670173
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 寺田 信行 大阪大学, 医学部, 助教授 (50150339)
• キーワード: 子宮 / 精嚢 / 細胞死 / エストロゲン / アンドロゲン / プロゲステロン / グルココルチコイド

研究概要

1)新生仔期マウス子宮上皮細胞の細胞死に及ぼす性ホルモンの作用に関する研究を行い以下の点を明らかにした。
(1)新生仔期マウスでは、卵巣は子宮上皮・間質細胞の増殖のみならず維持にも影響を及ぼしていない。
(2)エストロゲン刺激により増殖する新生仔期マウス子宮上皮細胞は、エストロゲン刺激の中止により死滅するが、エストロゲン刺激で増殖した新生仔期マウス子宮間質細胞は、エストロゲン刺激中止後も死滅しない。
(3)プロゲステロン、男性ホルモン、糖質コルチコイドは、エストロゲン刺激中止後の新生仔期マウス子宮上皮細胞の死滅を減少させる作用を持つ。
(4)エストロゲン刺激中止後の新生仔期マウス子宮上皮細胞の死滅は、アポトーシスの様式で起こる。今後、各種性ホルモンの子宮上皮細胞の細胞死抑制のメカニズムを研究する予定である。
2)器官培養を用いた新生仔期マウス精嚢細胞の増殖・細胞死に及ぼすTGF-β_1の作用に関する研究を行い、以下の点を明らかにした。
(1)TGF1-β_1は、インシュリンと男性ホルモンによる新生仔マウス精嚢上皮・間質の増殖を抑制するが、インシュリンのみによる精嚢上皮・間質の増殖は抑制しない。
(2)TGF-β_1は、成熟ラット前立腺で上皮細胞の細胞死を生じさせる事が報告されているが、TGF-β_1は新生仔期マウス精嚢上皮・間質の細胞死を有意に増加させない。今後TGF-β_1の精嚢細胞に対する作用が、成熟期と新生仔期で異なるか否か研究する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Oda,M.: "Maintenance by androgen and thyroid hormone of androgen-induced convoluted tublar cells in mouse submandibular glands." Anatomical Record. 232. 453-457 (1992)
• [文献書誌] Jikihara,H.: "Inhibitory effect of medroxyprogesterone acetate on angiogenesis induced by human endometrial cancer." American Journal of Obstetrics & Gynecology. 167. 207-211 (1992)
• [文献書誌] Tsutsui,S.: "Promoting effect of ovariectomy on hepatocellular tumorigenesis induced in mice by 3'-methyl-4-dimethylaminoazobenzene." Virchows Archiev B. 62. 371-375 (1992)
• [文献書誌] Yamamoto,T.: "Stimulation by estrogen and progesterone of the in vivo growth of transformed murine Leydig cells only at the limited early phase of growth." Anticancer Research. 12. 1339-1346 (1992)
• [文献書誌] Mizutani,T.: "No inhibitory effects of gestrinone and MPA on estrogen production by ovaries of hypophysectomized rats stimulated by gonadotropins." Acta Endocrinologica Japonica. 39. 615-621 (1992)
• [文献書誌] Takatsuka,D.: "Enhancement by androgen of the angiogenic ability of androgen-responsive Shionogi Carcinoma 115." Anticancer Research 1992 in press.