コラ-ゲンやエラスチンの分子内あるいは分子間架橋形成に必須であり、線維化を伴う各種病変に密接に関係する酵素であるリジルオキシダ-ゼ(lysyl oxidase)のヒトのcDNAクロ-ニングを行った。当初、クロ-ニングには我々がすでに得ていたヒトのリジルオキシダ-ゼに対する抗体を用いる予定であったが、P.C.TrackmanらによってラットのcDNAの塩基配列が報告されたので計画を変更し、まずpolymerase chain reaction(PCR)法によってラット大動脈mRNAの逆転写産物から550塩基長のリジルオキシダ-ゼcDNA断片を得た。この断片をプロ-ブとしてヒト胎盤cDNAライブラリ-をスクリ-ニングしたところ861塩基長の陽性クロ-ン1個を得た。この陽性クロ-ンの塩基配列を決定しラットcDNAの塩基配列と比較したところ、96%のホモロジ-があり、ヒトリジルオキシダ-ゼcDNAの翻訳領域の3'側約半分をカバ-する断片であることが確認された。さらに完全長cDNAおよびgenomic DNAのクロ-ニングを進める一方、得られたヒトリジルオキシダ-ゼcDNAをプロ-ブとしてchromosomal in situハイブリダイゼ-ションを行い、リジルオキシダ-ゼ遺伝子が第5染色体上にあることを明らかにした。これまでIX型EhlersーDanlos症候群はリジルオキシダ-ゼに異常があると考えられてきたが、IX型EhlersーDanlos症候群は伴性遺伝することから、本症候群におけるリジルオキシダ-ゼ活性の異常は一次的なものではないことが明らかになった。
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