研究概要 |
ヒト内在性レトロウィルス様ゲノム(c1oneー1)のenv遺伝子領域のDNA断片を大腸菌での組替え蛋白発現ベクタ-であるpETに挿入した組替えDNAを得た。この組替えDNAで大腸菌を形質転換した後、培養を行い更にIPTGを加えて組替え蛋白の誘導を行った。その結果大量の組替え蛋白の発現が認められた。組替え蛋白の発現はSDSーPAGEで確認し分子量25,000であった。これは用いたDNA断片から推定された分子量とほぼ同じであった。我々が得た組替え蛋白は封入体の性状を持っていたので高速遠心分離により精製と超音波破砕を繰り返すことにより組替え蛋白からなる精製された封入体を得ることができた。この精製蛋白を家兎に免疫し特異的な抗血清を得ることができた。次にこの抗体を用いてヒトの正常組織を免疫染色したが有意の染色像は得られなかった。しかし胎盤組織を用いた場合に特異的な染色像が得られた。特に合胞栄養芽細胞に強く陽性所見が認められた。また血管の内皮細胞にも陽性所見が認められた。これらの結果はヒトの組織にも内在性レトロウィルス遺伝子産物が発現していることを示唆するものである。次に精製組替え蛋白を7Mの尿素を用いて可溶化した後に、0.5Mの尿素溶液に透析して可溶化蛋白を得た。この可溶化蛋白をELISA法に用いて組替え蛋白に対する自然抗体がヒトの血清中に存在するかを検討した。その結果SLEの患者血清中には組替え蛋白に対する自然抗体が存在することが判明した。しかし同様の自然抗体は程度は低いものの健康人の血清中にも存在することがわかった。
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