当核年度内にヒト内在性レトロウイルスを検出するために抗原や抗血清などの手段を作製し人体組織での発現を検討した。この目的を達成するためにヒト内在性レトロウイルス様遣伝子clone4-1を修飾しenV領域とgag領域遣伝子産物に相当する組み替え蛋白を作製し抗体を得た。enV遣伝子領域遣伝子産物は大腸菌内で産生した。この遣伝子産物に対する家兎の抗体を用いた組織学検索では正常の組織にはヒト内在性レトロウイルス関連抗原は検出できなかったが胎盤組織の栄養芽性合胞細胞や血管中膜平滑筋細胞や血管内皮細胞に発現していた。次に用いたcolne4-1のgag遣伝子領域はstop codonにより3つの翻訳可能領域に分断されていた。stop codonをPCRによるsite mutagenesisにより改変し連続した翻訳可能領域を含む遣伝子を得た。次にこのDNA断片をバキュロウイルスヴェクターに挿入した後にSpodoptera frugiperda細胞に移入し野生型のバキュロウイルス との組み替え体を得た。次にこのような組み替え体を含む細胞を同定し、増殖させ組み替え蛋白を得た。この組み替え蛋白は分子量約29Kdであった。この蛋白はマウス白血病ウイルスのP30に相当する。Western hybridization法によりこの組み替え蛋白にはマウスあるいはネコの白血病ウスルスのP30に対する抗体に反応した。この結果はヒト内在性レトロウイルス遣伝子はマウスやネコの白血病ウイルスと起源が同じであることを示す。抗血清による組織分布は昨年度のenV領域遣伝子産物の組織分布と同様であった。種々の膠原病患者血清と、この組み替え蛋白を用いてWetern hybridizationを行なったところ多数例でこの組み替えgag蛋白に反応する抗体を検出した。これまで混合型結合織病患者血清中に認められるマウスあるいはネコのgag蛋白に対する自然抗体はヒト内在性レトロウイルス蛋白を検出している可能性が考えられる。
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