研究概要 |
異なった近交系間のF1交雜マウスにおけるジメチルヒドラジン(DMH)誘発大腸腫瘍の系を確立した。低発系と高発系間のF1交雜マウスにおける大腸腫瘍発生の様子は両親系統の中間かやや低発系に近いが、高発系間のF1マウスでは親系統と同様に、早期から高率に大腸粘膜の異常が認められた。低発系と高発系間のF1マウスにおいては、大腸以外の肛門部、肝臓、肺、血管組織にも腫瘍の発生が認められ、それぞれの腫瘍の発生率が、系統、雌雄及び投与条件に影響されることが明らかになった。 得られた大腸腫瘍155例及び他臓器の腫瘍15例について、3種のras系遺伝子(K-,H-,N-)エクソン1-3における異常をPCR-SSCP法とダイレクトシークエンス法により解析した。その結果、マウス大腸腫瘍におけるras系遺伝子の変異の頻度が10%とヒトに比べて低いこと、既知のK-rasエクソン1(コドン12)の変異に加えて、コドン18や、H-ras(エクソン1、2)、N-ras(エクソン1、2、3)の変異が明らかになった。また、DMHによる肺腺腫において高率にK-rasの変異が検出された。DMH誘発腫瘍における塩基配列変化の80%はG:C→A:Tへの変化であった。 同様に、p53遺伝子エクソン5-8における変異をPCR-SSCP法により検索した結果、20例に遺伝子変異を示す移動度の異なるバンドを見いだした。一方、p53遺伝子近傍の染色体特異的マイクロサテライト(STMS)プライマー及びp53遺伝子イントロン6の多型を利用して、PCR-SSCP法により対立遺伝子欠失の検出を試みた。それぞれ1例ずつにSSCP解析において移動度の異なるバンドを見いだしたが、対立遺伝子欠失は全く認められなかった。
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