研究概要 |
当核年度はCD4^+T細胞欠損ラット(LECラット)における免疫学的機能を正常ラットであるWKAHラットLEAラットあるいはF344ラットとの対比において検討した。LECラットの胸腺内にはCD4^+T細胞が欠損していたが脾やリンパ節には正常ラットの1/5〜1/2のごく少数存在した。しかしこれらのCD4^+T細胞はインタ-ロイキン2(ILー2)およびILー4産生能が極度に低く,また抗体産生系におけるヘルパ-T細胞としての機能もほとんど認められなかった。一方CD8^+T細胞のキラ-T細胞としての機能は正常であった。また抗体産生細胞としてのB細胞機能は正常であった。ついでLECラットにおけるCD4^+T細胞の機能的,器質的欠陥がLECラットの胸腺の微小環境の欠陥によるのかT細胞系の幹細胞の欠陥に由来するのかを確認する実験を行なった。まず幹細胞は正常であるが胸腺が存在しないヌ-ドラットの腎被膜下にLECラットの胎児胸腺に移植し、ヌ-ドラット由来のT細胞系の幹細胞がどのように分化するかを観察した。その結果,移植したLEC由来の胸腺内でCD8^+T細胞のみならずCD4^+T細胞も正常ラットと同様の分化しリンパ節内CD4^+T細胞のILー2産生能も正常レベルであることが確認された。またこれらの実験とは逆に2ECラットの被膜下に正常ラットの胎児胸腺を移植した場合はその胸腺内にはCD4^+T細胞はほとんど出現しなかった。以上の結果からLECラットにおけるCD4^+細胞の機能的,器質的欠陥はLECラット胸腺に異常があるのではなく,そのT細胞系の幹細胞に異常があることが明らかとなった。
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