マンソン律頭条虫凝充尾虫が産生する成長ホルモン様(GHと略す)物質の精製は、妊娠家免の肝臓から精製したGH受容体をリガントにしてアフィニティ・クロマトグラフィによって行っていた。しかし、妊娠家免の肝臓からGH受容体を精製するのは、きわめて煩雑であるので今回は血清中に存在するGH結合蛋白をGH受容体の代智として用いることを試みた。即ち、GHをリガントとしたアフィニティ・クロマトカラムを作製し、家免血清をカラムに流した後、結合緩衝液、4M尿素で洗滌し、5M塩化マグネシウムにて溶出した。5M塩化マグネシウム溶出分画に ^<125>IーGHに対するGH結合活性が認められた。SDSーPAGE施行後、抗ヒトGHモノクロナ-ル抗体を用いてWestern Blot法にてGH結合蛋白は、48KDの分子量を持つことが示唆された。このGH結合蛋白をリガントにしてアフィニティ・クロマトカラムを作製した。 Triton Xー100を添加した抽出緩衝液で抽出した虫体抽出液をこのアフィニティ・クロマトカラムに流し、4M尿素、5M塩化マグネシウムにて洗滌、溶出を行った。得られた分画中のGH活性をDot Blot法にて抗ヒトGHモノクロナ-ル抗体を用いて定性したところ、肝臓由来のGH受容体を用いた場合とは異なり、4M尿素にてGH活性が容出された。 この溶出分画をゲル濾過すると最大ピ-クにGH活性が認められ、血清中のGH結合蛋白を用いたアフィニティ・クロマトグラフィ-で本虫が産生するGH様物質の精製が可能であることが明らかとなった。今後この精製手法で精製したGH様物質を用いてその生理作用を明らかにする予定である。
|