マンソン裂頭条虫擬充尾虫が産生する成長ホルモン(GH)様物質の特性を研究するために次のような実験を行った。まず、家兎血漿中のGH結合蛋白に本虫が産生するGH様物質が結合するのでヒト血漿中のGH結合蛋白(GH-BP)に本虫が産生するGH様物質が結合するか否かを観察した。即に、アフィニティ・クロマトグラフィによってGH-BPを精製した。Western Blott分析で29KDであった。このGH-BPを受容体としてラジオリセプター・セセイを行ったところ、^<125>I-GHとの結合活性が大変低く、GH様物質の添加により、GH-BPと^<125>I-GHとの結合が増加する現象が認められれ、今後の検討課題が生じた。次に、本虫の培養液が株化マクロファージ(A640-BB2株)のNO産生能に及ぼす影響を観察した。培養液マクロファージに加えるとインターフェロンγの有無にかかわらず、マクロファージ細胞質の発育を抑制し、さらにNO産生を若干抑制した。またインターフェロンγでプライミングされたマクロファージに培養液を加えると、対照に比較してNO産生が抑制された。一方、培養液を透析後、凍結乾燥したものを添加するとNO産生が促進した。このような培養液のマクロファージへの作用と培養液中のGH様物質との関係について検討するために、精製したGH様物質を用いて観察中である。 また一方、GH様物質の脂質代謝に対する作用を再検討するために、遊離脂肪細胞を用いてAdrenalin-induces lipolysisに対する培養液の影響を観察した。ゲル濾過により分画した培養液の各分画のAdrenalin-induced lipolysisに対する作用は、GH様物質を含む分画は、lipolysisを抑制し、他の1つの分画はlipolysisを促進した。これらの抑制、または促進する物質についてさらなる検討を進める予定である。
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