研究概要 |
旋毛虫が寄生する消化管には、特徴のあるリンパ組織が分布し、全身免疫系とは独立した、いわゆるgutーassociated lymphoid tissue(GALT)を形成している。そこに分布している免疫細胞の数は全身の免疫系の1/4を占めるともいわれ,免疫臓器としての消化管の意義が注目されるようになってきた。GALTに属するB細胞系については、特にIgA抗体産生機序など詳細な研究が行なわれてきたが、T細胞についての研究は数少ない。最近、私達は、旋毛虫成虫を腸管から排除するヘルパ-T細胞の存在を明らかにした。本研究ではこれらのT細胞集団から分泌されるサイトカインの作用を特に好酸球遊走活性の点から解明した。 消化法により得た旋毛虫筋肉内幼虫を経口的にラットに感染させた。感染3日目のラット胸管よりドレナ-ジ法により感作リンパ球を得た。リンパ球をアフィニティカラムクロマト法、パンニング法によりT細胞、およびT細胞亜集団(OX8^-OX22^-、OX8^-OX22^+)に分画した。これらのリンパ球を正常ラットに移入し攻撃感染するとOX8^-OX22^-ヘルパ-T細胞移入群のみに養子免疫が成立する。また小腸粘膜組織に好酸球の集積が認められた。一方OX8^-OX22^+ヘルパ-T細胞移入群では感染防御免疫は移入できず、小腸粘膜には肥満細胞の増生が観察された。 馬血清にて感作したモルモット腹腔から好酸球を得、T細胞培養上清中に含まれる好酸球遊走活性をボイデンチャンバ-法により調べた。OX8^-OX22^+ヘルパ-T細胞群の培養上清中には遊走活性が殆どみられず、OX8^-OX22^-ヘルパ-T細胞培養上清中のみに活性が存在した。これはin vivoでの結果を支持するものであった。現在これらの活性が転写レベルで阻害し得るのかまたは蛋白質合成レベルで阻害し得るのか検討中である。
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