棘口吸虫科のEchinostoma paraenseiの分泌物質が中間宿主貝Biomphalaria glabrataにどのような影響を及ぼすかを調べた。 199培養液とシュナイダー培養液を改変した培養液中でE.paraensei虫卵を孵化させ、スポロシストの培養を行ない、得られた培養液をB.glabrataに注入した。3日後に固定し、連続切片を作成し、血球生成器管の大きさ(断面積)を計測した。培養液を注入した貝の血球生成器管は、E.paraensei感染貝と同じ程度に大きくなっていた。したがって、E.paraenseiの分泌物質には中間宿主貝の血球生成器管の細胞増殖を引き起こす作用があることが確認された。 貝の体液をスライドグラスにとり、20分間インキュベートした後に培養液で洗った。スライドグラスに付着した血球細胞にスポロシスト培養液を加え、血球細胞のサイズ(細胞のスライドグラス上での広がり)の変化を位相差顕微鏡と描画装置を用いて記録した。新しい培養液を加えても血球細胞のサイズは変化しなかったが、培養液を加えると減少した。次にChemotaxis chamberを使って培養液の血球細胞の運動性への影響を調べた。血球細胞を含んだ貝の体液に同量の新しい培養液を加えたものを上室に、スポロシスト培養液に貝の体液を遠心して血球細胞を除いた同量の血漿を加えたものを下室に入れ、2時間インキュベートした。フィルターをメタノールで固定し、ギムザ染色を行ない、フィルター両面の血球細胞を数え、フィルター下面に移動した血球細胞の割合を調べた。フィルター下面に移動した血球細胞の割合はスポロシスト培養液を用いた場合には低下した。したがって、E.paraenseiの分泌物質には中間宿主貝の血球細胞の運動性を低下させる作用があることが確認された。
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