研究概要 |
今年度の研究では、日本住血吸虫感染マウス(C57BL/6,DBA/2,BDF1)のリンパ球を用いて、日本住血吸虫感染及び感作ウサギより得た抗SEA抗体のイディオタイプを認識するT細胞の存在を確認した。中でも、DBA/2のリンパ球が最も強い反応を示した。今回の結果は、日本住血吸虫感染や感作した異種動物の抗体イディオタイプを認識できるT細胞の存在をマンソン住血吸虫症の場合と同様に確認出来、マウスの系統によりその反応に違いが存在することが解った。感染経過中のこれらT細胞の消長について観察したところ、これらT細胞の反応は感染後6週という急性期の方が慢性期よりも強かった。三種のマウスのこれらイディオタイプを認識するT細胞と、肝臓内に形成される虫卵肉芽腫の大きさとの関連性を検討したところ、DBA/2マウスは、感染早期からウサギの抗SEA抗体(交差反応性イディオタイプ)に対する反応が強く、肉芽腫の大きさも小さかった。これに対し、C57BL/6マウスでは、感染早期の抗SEA抗体に対する反応は低く、また肉芽腫の大きさもDBA/2に比べ著しく大きかった。しかし、慢性期では、DBA/2マウスでは肝臓内の虫卵肉芽腫の大きさは抑制されなかったのに対し、C57BL/6マウスでは強く抑制され、DBA/2マウスとほぼ同様にまで肉芽腫は容積は減少した。このように、肉芽の抑制が認められたにも関わらず、C57BL/6マウスの多くは、感染10週以後死亡した。このように、肉芽腫形成の抑制現象と感染マウスの死亡との関連性に付いては今後更に検討しなければならない点は存在するが、今年度の研究結果より、急性期における抗SEA抗体に対するTリンパ球の認識と、肉芽腫の形成に関連性があることが強く示唆された。 平成4年度は、これら結果に基づき、抗イディオタイプ・モノクロ-ナル抗体を作成し、これら抗イディオタイプ抗体で抗SEA抗体の作用をblockingした場合にin vivoあるいは、in vitroにおいて肉芽腫の形成がどの様に影響を受けるかについての検討を行う予定である。
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