昨年度の研究で、日本住血吸虫感染マウスのリンパ球中に、抗SEA抗体のイディオタイプを認識するT細胞が存在することを確認した。異種動物の、同一抗原に対する抗体のイディオトープを認識出来るT細胞の存在は、マンソン住血吸虫症の場合と同様に、マウスの系統間により違いが存在した。使用した実験動物の中では、DBA/2マウスが最も強い反応を示した。また、感染経過中の、これらT細胞の応答は急性期の方が慢性期よりも強く、感染マウスの血中抗体価とは関係が認められなかった。ついで、イディオタイプを認識するT細胞と、住血吸虫症の病態の指標の一つである肝臓内虫卵肉芽腫の大きさの相関性を検討したところ、感染早期では、逆相関関係を示した。しかし、慢性期には、明確な相関性は見いだせなかった。このことは、これらイディオタイプを認識するT細胞が、感染早期の肉芽腫形成の抑制に関与している可能性が示唆された。 本年度は、抗イディオタイプ・モノクローナル抗体を作成し、SEA抗原とモノクローナル抗体との交差反応性を検討したが、いづれのモノクローナル抗体も交差反応を示さず、これら抗イディオタイプの肉芽腫形成に及ぼす影響や、抗体イディオトープのTリンパ球への役割について、十分な検討は出来なかった。しかし、SEA抗原に特異的なC57BL/6のT細胞株は、異種動物より得たポリクローナルな抗SEA抗体により活性化されることが解った。即ち、ポリクローナル抗体中に、SEA抗原のあるものと同一のエピトープを持っている可能性があり、今後、さらに同種動物のポリクローナル抗体にも同様の作用が存在するか、さらにこれら同種のポリクローナル抗体に対するモノクローナル抗体を作成して検討を続ける予定である。
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